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《言う者は知らず知る者は言わず》 じゃぁOODAループなら使えるのか? その11

今回も引き続き

Patterns of Conflictの141ページ(PDFの表示では142/197です)の ”Pattern” のページです。

 

これまでにその上層を構成する  ”国家目標→大戦略→戦略目標” をざっと見てまいりましたので,

◆ここからはその下層にある ”戦略→大戦術→戦術” の3つ

を調べていきます。

 

今回は ”戦略” と ”大戦術” について探検します。

 

 

《戦略:Strategy》

• Strategy
Penetrate adversary’s moral-mental-physical being to dissolve his moral fiber, disorient his mental images, disrupt his operations, and overload his system, as well as subvert, shatter, seize, or otherwise subdue those moral-mental-physical bastions, connections, or activities that he depends upon, in order to destroy internal harmony, produce paralysis, and collapse adversary’s will to resist.

 

• 戦略

敵の道義心を薄れさせ,その精神的イメージを見失わせ,その作戦を混乱させ、そしてそのシステムを過負荷にして,道徳的-心理的-物理的な本質に侵入する。 内部の融和を破壊し,麻痺を生じさせ,敵の抵抗する意志を衰弱させるために,その依存する道徳的-心理的-物理的な砦,つながり,または活動を撃滅するだけでなく,心に衝撃を加え,支配し,またはその他の方法で制圧する。

 

有形力を行使して敵を撃滅することだけを考えているような相手と,こんなふうに周到な戦略として敵の内側に侵入して戦意を喪失させることを考えている相手では,脅威の度合が全く異なります。

 

敵に回したくないです。

たとえばジャイアンこと剛田武君とウルトラマンに出てくるメフィラス星人の差というような感じでしょうか。

いつもながら,たとえがわかりにくくてすみません。

 

ジャイアンは「メッタメタのギッタギタにしてやる」なんてスプラッター調の発言をしますが,”ドラえもん” はサイコサスペンスではなく子供向けアニメに分類されています。

ジャイアンは,ストーリー展開のなかで,のび太を困らせることでドラえもんから秘密道具を引き出すという大事な役回りを担う,単純なガキ大将という設定です。

 

もっと強力な ”かあちゃん” には頭が上がらないという明快な権力構造がありますので,ジャイアンを懲らしめるには,ジャイアンかあちゃんを味方に引き入れることですべてまるく収まりそうな雰囲気です。

 

一方,メフィラス星人のほうは・・・

ウルトラマンのなかではとても異質な侵略者で,「私は暴力はきらいでね」 などと言うのだそうです。

少々無理筋ではありますが,少年に地球を差し出させようと画策して失敗し,その後はお約束のウルトラマンとの力較べバトルに発展するものの,「地球人のこころに負けた」と言い残して戦い半ばで地球を去るという少し変わったストーリーであったようです。

あのウルトラマンシリーズのなかにあって,有形力ではなく心理戦による勝利を画策した点で極めて特異です。

ちなみにその後もウルトラシリーズには何度か登場しており,「卑怯もラッキョウもあるものか」という名言を残したといいます。

 

 

”戦略” を達成するための大枠の手法をボイド大佐は,次の ”大戦術” で提示しています。

 

 

《大戦術》

• Grand tactics
Operate inside adversary’s observation-orientation-decision-action loops, or get inside his mind-time-space, to create tangles of threatening and/or non-threatening events/efforts as well as repeatedly generate mismatches between those events/efforts adversary observes, or imagines, and those he must react to, to survive;
           thereby
Enmesh adversary in an amorphous, menacing, and unpredictable world of uncertainty, doubt, mistrust, confusion, disorder, fear, panic, chaos … and/or fold adversary back inside himself;
           thereby
Maneuver adversary beyond his moral-mental-physical capacity to adapt or endure so that he can neither divine our intentions nor focus his efforts to cope with the unfolding strategic design or related decisive strokes as they penetrate, splinter, isolate or envelop, and overwhelm him.

 

• 大戦術

敵による観察‐情勢判断‐決定‐行動のループ(OODAループ)の内側で活動し,もしくはそのマインド - タイム - スペースの中に入り,脅威的およびまたは非脅威的な事象/取組みに混乱を生じさせる。
同様に敵が観察し,あるいは想像する事象/取組みと,敵が生き残るために対処しなければならない事象/取組みの間に,繰り返し不一致を発生させる;

  それによって

不確実,疑惑,不信,混乱,無秩序,恐怖、パニック,混沌などの,形の定まらない殺気立った予測不可能な世界に敵を陥らせ,加えてまたは敵を自分自身の中に押し戻す。

 

  それによって

敵に自己の道徳的 - 精神的 - 物理的能力を超えて適応し,または耐えるように仕向ける。
それによって敵はわれわれの意図を予見することも,展開していく戦略的デザインにも,関連して,自己に浸透し,裂き,孤立または包摂し,圧倒するような決定的な打撃への対処にも集中することができない。

 

待ってました。ようやくです。

ようやくこのシリーズのテーマとなっている ”OODAループ” がここで登場するのでありました。

 

 

アマノジャクなことを言えば,ここまでは出番がなかったのです。

 

◆OODAループは  ”戦略” ではなく,それを達成するための”戦術”

であることがわかります。

 

もしも,「OODAループを企業活性の戦略として・・・」てなことを言う人がいれば,ボイド大佐の言っていることとの不整合を疑ってみてもよいかもしれません。

 

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《今回のまとめ》 

敵の旋回させるOODAの内面に入り込み,誤った情報をまき散らして混乱させることによって,敵を疲弊させ,目標を失わさせ,論理的で正しい見通しに基づく推測や意思決定を不能にせよというわけです。

 

字面だけを追うとイメージしにくいですが,もしも自分や仲間,家族がそうされる立場だったらと想像すると本当におそろしくなります。

 

さらにそのような戦術が,頂点にある国家目標のところから,まっすぐに筋金の入ったぶれない理念に裏付けられたものであるというのですから,そのようなことを仕掛けてくる相手と立ち向かい,さらに巧妙に打ち破らなければならないのは,気が遠くなるほど至難です。

 

次にさらに具体的な手法が ”戦術” として提案されます。

 

この続きは次回に。