ジタバタのかなた

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《言う者は知らず知る者は言わず》 じゃぁOODAループなら使えるのか? その1

前回まで3回にわたって無茶なPDCA趣味者を批判しながらも,

 

◆誤った一貫性を持ってしまっているPDCA信奉者を改心させるのは至難

◆組織の権力構造上も新しい枠組みをボトムアップ・ミドルアップダウンで根付かせるのは難しいかも

 

とネガティヴなことを申しました。

 

とはいえ,スンバラシイ代案が提示できれば初期型のヒトビトも興味を示すかもしれないと考えました。

 

そんなこんなで前回は,最近ネットや書籍などでよく見かけるようになった

◆”OODAループ”

なら,PDCAによく似た語呂だから同類を偽装しやすいというだけでなく,権威主義的で新しもの好きで優越コンプレックスのありそうなタイプの人になら,うまく擦り込むことができるかもしれない

と提案しました。

 

すでに少し嫌味のある書き方になってます?

OODAループを少し探って見たところ,確かに ”組織を構成するいろいろな階層の人々” が意識の共有をうまくできるならば,組織力を強化するのに役立ちそうだということはわかりました。

ただ,PDCA趣味者にOODAループへの乗り換えを決意させるには,少し工夫がいるかもしれないとも感じました。 

 

なぜか・・・,それは ”意識共有の度合い” なんて計量可視化できないものの最たるものであり,これまで ”数値目標” というおいしい毒まんじゅうをたらふく食べ散らかしながら生きてきた人たちのお口には合わないんじゃないかと思ったからです。

 

まやもやいきなりネガティヴなのですが,今回は

◆OODAループについて調べてみたことをご紹介

いたします。

 

いまの時代,何事にも直感で飛びつかないことは大事かもしれません。

遠くで旗を振っている人たちは舌を出してるかもしれませんので。

味方のフリして近寄ってきて裏切るというのもよくある話ですし・・・。

 

 

《まずは生い立ちから》

まずは,ネットや書籍などから得られたOODAループに関することのダイジェストです。

 

OODAループは,米空軍のパイロットであったジョン・ボイド大佐(1927~1997)が発案したものでした。

 

ボイド大佐は朝鮮戦争当時に戦闘機パイロットとして活躍した人で,その後戦略研究の分野で米軍に大きな貢献をした人です。

職人気質を持つ反骨の理論派というような人物像がイメージされます。

すごいことを成し遂げる人に特有の頑固さやこだわりを持つ人であったようです。

 

朝鮮戦争では当初国連軍が制空権を握っていたところ,ソ連製のMiG-15の登場によりそれが逆転し,米国はF-86を投入して巻き返しを図ったようで,ボイド大佐はこのことを徹底的に検討しています。

 

MiGの方が一般的な性能では-86より優れているのに,-86が撃墜率でMiGに勝ることができたのは,

 ■-86にはバブルキャノピー(360度全方位視界が保たれている風防)が採用されており,パイロットが周囲を目視で把握する能力においてMiGより優位であったこと

 ■フルパワーの油圧コントロールによる敏捷性が-86には備わっていたこと

の2つの要素によって,MiGパイロットの状況判断に先んじた動きが可能であったことによるとの分析をしています。

 

ボイド大佐はこの分析結果から,

◆自分の観察(Observe)・情勢判断(Orient)・決定(Decide)・行動(Act)のループを敵よりも早く処理することができれば,敵のそのループに侵入することができ,それによって敵に誤った決定と行動をさせることができる

と結論づけています。

 

つまり,動きの読めない敵に勝つために,敵のOODAループに侵入してかく乱する・・・これがOODAループを高速で処理することの狙いであるようです。

 

 

《ボイド大佐のナマの発言から》

ボイド大佐が勝敗論(A Discourse on Winning and Losing )のエッセンスとして1995年に出した勝敗の本質(THE Essence of Winning and Losing)の付属書の部分に書かれたのが

◆The OODA ”Loop” Sketch

でした。

 

先ほどリンクを表示した ”THE Essence of Winning and Losing”の3ページ目にある図を日本語にしてみました。

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図にあるとおり,O-O-D-Aはそれぞれ,

O:Observe 観察

O:Orient  情勢判断

D:Decide    決定

A:Act          行動

の頭文字をとったものです。

 

これを考案した当初のボイド大佐は, ”オー・オー・ディー・エイ・ループ” と呼んでいたようですが,他の人がウーダ・ループと呼ぶようになるにつれ,ご自身もそれを使うようになったみたいです。

 

1989年にボイド大佐がMarine Corps University(海兵隊大学)で少人数を対象に勝敗論(A Discourse on Winning and Losing)のレクチャーをした内容の口述筆記がネット上に残っていました。

これがそうです。

 

そのなかで,ボイド大佐がおおむね

◆OODAというプロセスは,あなたも私も,誰もが,人間ならみなしなければならないことだ。

人間はみな観察し情勢判断し決定し行動する。

しかし留意してほしい。

われわれは敵よりもはやくそれをしたいのだ。

われわれは敵のOODAループの内側に入りたいのであり,自分の中に敵を入れたくないのだ。

と言っている箇所があります。

 

この発言はOODAループの性質を表すのにとても象徴的だと思います。

 

ほかにもネット上にはボイド大佐の講義の動画なども残っていました。

どなたかに字幕をつけてほしいと切望いたします。

 

 

《ボイド大佐と孫子

ボイド大佐は,OODAループを練るにあたって古今東西の戦略思想を研究し,とりわけ孫子の思想を深く理解していたと言われています。

 

孫子第一 計篇 四

◆兵とは詭道なり

とあります。ここでいう兵は戦争という意味です。

 

戦争とは敵の意表を衝き,敵をかく乱して不意を撃つことだと孫子は言っています。

まさしくそうするためには,敵よりうまく観察し,機敏に情勢判断,意思決定,行動できないといけないわけです。

ボイド大佐も間違いなく孫子のこの部分を意識していると思われます。

 

以前に夏目漱石の愚見数則をご紹介した際に,「真説 孫子」(デレク・ユアン著)という書籍をご紹介いたしましたところ,そこにもボイド大佐がいかに孫子を深く理解していたかが詳述されていました。

 

 

PDCAの代案として使えるのかぁ?》

さて翻って,私たちがPDCAの代わりにOODAを使えるのかというテーマに立ち返ってみると,ボイド大佐が言う「みんなすることだよ」という部分がひっかかります。

 

PDCAも考えてみりゃ,計画・実行・検証・見直しというような,言葉にすると大層ながら,実は毎日のごはんを何にするかを決めるときにだれもが行っているようなことでした。

 

当たり前のことなのに難しげに言われると納得しがちという悪いクセを,またもやOODAでも遺憾なく発揮しちまうのかオレ,大丈夫か自分,しっかりしろ,寝たら死ぬぞ,歌をうたえ歌を・・・。

 

波乱の展開の予感を感じながら,次回に続きます。