《言う者は知らず知る者は言わず》 じゃぁOODAループなら使えるのか? その3
前回はOODAループをもう一度じっくり見てみることにしました。
というのも,
◆OODAループは,それを提示したボイド大佐自身が ”みんながそれをしなければならない” ものだと言っている
◆もともと頭のなかにも存在するものが,体系づけられ整理されたという性質のもののようである
ことや
◆OODAループだけに焦点を当てて組織運営のための魔法の手法として扱うことはできない
ことがわかってきて,
◆OOADループの前提や背景となるところに,どうやら組織運営をうまくやるための鍵がありそうだ
◆それを見つけるために,もう一度OODAループのスケッチをしっかり見てみよう
と思ったからでした。
◆というわけで今回もOODAループのスケッチを眺めてみます。
《OODAループのスケッチを見るところに戻って》
もう一度図に戻ります。
その話しは終わったはずじゃなかったの?・・・ですが・・・
前回はフィードバックとフィードフォワードという説明書きの意味の部分で行ったり来たりしました。
問題を単純にするために個人のOODAループのなかのこととして考えてみますと,
■どのプロセスから始まるか
や
■途中で情報を返す流れやプロセスをすっ飛ばしている部分があること
は別にして,
◆フォワードやバックという単語が使われていることからしても,時間軸に沿ってO⇒O⇒D⇒Aというようなプロセスが生じる
ことを図からぼんやりと読み取ることはできます。
そうするとフィードバックはまだイメージしやすいんです。
生じた結果を,それを生じさせる要因を形作るプロセスのところに戻して,目標とする結果との差を埋めるようにさせるというようなことでしょう。
時系列上も,結果の発生を返すということにタイムマシンは必要ありません。
分かりにくいのは ”フィードフォワード” です。
処理する内容の分担から見ると,O・O・D・Aは,それぞれ異なる作用によって異なる結果を生じさせるプロセスです。
単にそれぞれのプロセスで発生した情報をバトンにして,次のプロセスに手渡すということならば理解できるのですが,”フィードフォワード” という言葉になると途端に混乱してしまいます。
ネットで調べてみた ”フィードフォワード制御” というようなこととも少し違っています。
この点については,今後も継続して調べることにして,次に行こうと思います。
ただ,せっかく時間かけて調べたのに,ちゃんとした収穫がなかったという事実を受け入れるのは少し悔しい。
ということで,努力点を自分に与えて今後のモヤモヤを少しでも少なくしておきます。
世間でいうところの ”お茶を濁す” というヤツですね。
間違った勝手な解釈であることは承知で,無根拠なことを言うのをお許しくださるならば・・・
ひょっとして,武道で言うところの ”残心” というような,次のプロセスに移ったのちも不測に備えられるように意識を残しておくような連鎖のことを言ってる?
ということにして仮納得しておきます。
ボイド大佐は宮本武蔵の五輪の書にも精通していたと言いますし・・・。
まっ,浅知恵の勘違いに終わるのでしょうが・・・。
《暗黙の誘導・制御》
元の図では ”Implicit Guidance & Control” です。
図の上部で ”観察(Observe)” と ”行動(Act)” の間を結ぶ矢印です。
矢印の線は情勢判断(Orient)の中を通っているように見えます。
”Guidance & Control” で ”誘導制御” と訳すようです。
航空管制などで使われる用語でした。
ボイド大佐は飛行機乗りでしたので,そんな用語がしっくり馴染むのでしょう。
それが ”implicit” (明示されない・暗黙の) なので,
◆暗黙の誘導・制御
ということになります。
この ”暗黙の誘導・制御” は,OODAループの高速処理に欠かせない概念で,
◆ものごとをパターンで認識することによって思考の省力化を図り,意思決定と行動を高速化する
というようなことのようです。
心理学で言う ”二重過程理論” というようなことと似たものでしょうか。
カーネマン博士の ”ファスト&スロー” (僕はハヤカワ・ノンフィクション文庫版の上・下を読みました) のなかでも紹介されている
■システム1 - 早くて直観的で自動的で経験則を重視するようなときの判断
■システム2 - 遅くて熟慮が必要でスイッチを入れる必要があるようなときの判断
です。
暗黙の誘導・制御はこのうちの ”システム1” に近いと感じます。
例えば,右足を出してからだを前に傾けて倒れる前に左足を・・・・歩くときにいちいちこんな風に熟考分解しながら実行しませんし,また例えば,コンビニに家具を買いに行かないのも,いずれもパターンとして知らない間に学習したからです。
◆システム1の判断のような,わざわざ熟考しないでも瞬時に判断できることを増やしていく
ということが,この "暗黙の誘導・制御" の中身のようです。
当然にシステム2でするようなことを,鍛練によってシステム1に変換していくというようなことも含まれるでしょう。
ボイド大佐は "repertoire" レパートリーというワードを使い,
◆レパートリーが広いほど広角レンズを手に入れ、敵は狭角レンズを手に入れたことになる
というように例えています。
僕のまわりにも「これまで怪我もせずに生き抜くことができてよかったね」というような危うい人や,「鼻歌まじりでよくそんなすごいことができるね」というような達者な人がいます。
かたや暗黙知がとても少ない人,こなた人並み外れてスペシャルに多い人です。
一緒に鬼が島に行くならダンゼン後者です。
キビ団子じゃついてきてくれないかもしれませんが・・・。
《そろそろ核心に近づいてきたような》
暗黙知・レパートリー・パターンとして認識できること,そんなものを増やしていくと言うけど,やみくもに目標もなくできることではありませんよね。
それはいったい誰のなんのためでどんなことに作用するの?
とか,
どんな分野のことについて増やせばいいの?
というような疑問が生じます。
理念や目標としていることが定まってないと,まったくアサッテなことになってしまってダレトクな骨折り損にもなりかねません。
PDCA趣味者を批判するときに,あんだけ目標の転移が良くないといいながら,手段のところでグルグル回っていてもなんだかなぁです。
ということで,OODAループを高速で処理することの有用性や手法についてはぼんやりわかったところで,そろそろその前提や背景,つまり,OODAループを健やかな組織運営に使うための理論を調べるところに参りたいと思います。
書きたいところと書くべきところを意識すべしとも言いますし。
積み残しはたくさんあるのですが,そこらへんはまた機会を見つけて。
先ほどはフィードフォワードを理解するために問題を単純にするために個人のOODAループのなかのこととして考えてみましたが,OODAループを個人だけでなく組織運営上で使うためにいままで調べてきたのですから,その観点から考えていく必要があります。
次回以降でそんな核心に近づきたいと考えます。きっとそのはずです。
もう肩と背中がグリグリです。でも・・・楽しい。
逃げちゃだめだ。
エヴァフリークじゃないんだけどね。