ジタバタのかなた

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《言う者は知らず知る者は言わず》 じゃぁOODAループなら使えるのか? その4

これまで3回にわたって

 

◆組織運営に多用されているPDCAサイクルの後釜としてOODAループは好適なのか

◆もしそうだとしたら,いったいなにをどうすればいいのか

 

そんなことを探るためにいろいろ調べてきました。

 

調べるにあたっては,

■OODAループのスケッチをよく眺めてみること

■提唱者であるボイド大佐の考えを拾い集めてみること

を手法としました。

 

その途上で分かってきたことは

 

◆OODAループは変化する相手への対処で,誰もが処理しているプロセスを整理して図示したもの

◆それだけをアタッチメント部品のように取り付けるだけで素晴らしい未来が約束されるという性質のものではなさそう

◆OODAループは,それを敵がするよりも高速で処理することによって,敵のOODAループのなかに侵入し,敵をかく乱し困惑させ思考停止させることをコンセプトにしている

 

ということでした。

 

 

今回こそ,OODAループでは明示されていない前提や背景などの核心的なステージに移行したいと思っていたのですが,それを明らかにするためには,もう少しOODAループのスケッチ自体に見ておく部分があるようです。

 

で・・・ボイド大佐の注意書きなども踏まえながら懲りずにもう一度眺めてみます。

 

 

《OODAループのスケッチの下部にあった注意書き》

ボイド大佐の書いた ”THE Essence of Winning and Losing” の中に ”The OODA “Loop” Sketch” が存在することはすでにご紹介しました。

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その図の下のほうに,注意書きのボックスがあります。

 

恥ずかしながら英語は不得手で・・・。

さくさく話せたり読めたりする人がほんとにうらやましい。

 

でも,こうやって得意でないことを公言しておくと,納得できるまで格闘していても大目に見てもらいやすいので好都合です。

さらにいえば日本語の能力も怪しいので,理解力の高い人がさらっと訳したものは響きにくく,自分で理解できるまでこねくりまわしますので,変な訳になっている可能性が高いことをお断りしておきます。

いいわけと愚直アピールで恐縮です。

・・・”愚” ではありますが,”直” かどうかは微妙です。

 

で,その英文と試しの訳です。

Insights:

Note how orientation shapes observation, shapes decision, shapes action, and in turn is shaped by the feedback and other phenomena coming into our sensing or observing window.


Also note how  the entire “loop” (not just orientation) is an ongoing many-sided implicit cross-referencing process of projection, empathy, correlation, and rejection.

 

洞察:

情勢判断がどのように観察・決定・行動を形作り、そして次々にそのフィードバックや我々のセンサや監視窓に入ってくる他の現象によって形づくられるのかに注意してください。


また,「ループ」全体(情勢判断だけでなく)が,継続的で多面的で非明示的な予測,共感,相関,および排除の相互参照プロセスであることにも注意してください。 

後段の ”相互参照(クロスレファレンス)” は,種々の現象にラベルをつけてマッピングしておいて検索抽出を容易にするようなことでしょうか。

 

 

《”注意書き” が言いたいのは》

 この注意書きを見ると,ボイド大佐は,

 

◆OODAループは情勢判断を中心に構成されているものではあるが,情勢判断の枠の外などループの全体で種々の有機的なスクリーニングがなされるプロセスであることを読み取ってほしい

 

と言っているようです。

 

OODAループのスケッチでは,主軸を構成するOODAの各プロセスのいたるところから多数の矢印が出たり入ったりしていることも併せて考えれば,

 

◆OODAループは,時系列に沿って ”一周グルっと回って次へ” というような一本調子のものではなく,観察,情勢判断,決定,行動というようなプロセスのなかで,同時にいろいろな思考の処理が生じるシステムであるというような理解の方が馴染みやすい

 

ということになります。

 

 

《麻雀で考えれば比較的わかりやすいです》

前に例として持ち出した麻雀の最中に,自分がどんなことを考えているかをトレースしてみると,決して観察から行動までを順々にゆっくり噛みしめているわけでないことが分かりました。

いろんな情報をパラレルで処理しています。

まさしくOODAループの意思決定・行動プロセスを踏襲しています。

 

OODAループのスケッチの右肩あたりの謎のコメント

◆暗黙の誘導制御

という ”ちょっとナニ言っているかわからない級” の取っつきにくい概念も,麻雀に例えればわかりやすくなりました。

 

つまり,あるていど自分の戦術にもとづいて手牌が煮詰まってきたら,自分の切る牌も対戦相手の切る牌もパターン認識で処理しています。

いちいちそれが当たり牌かどうかをじっくり考えなくても,自分のスジと他者の河(捨て牌)の傾向などを見ながらパターンで認識できるようになります。

 

麻雀をされない方には少しわかりにくいかもしれませんが,囲碁でも将棋でも七並べでも,いちいちマニュアルと見比べるようなことをせずにパターンとして認識していることは極めて短時間で行動できます。

 

僕の麻雀レベルは素人のところでとどまっていますので,清一色の手など,何面も待ちがある手だと目が泳いでよくバレました。

そんなことも地道に訓練を積んでパターン認識のタネを増やすような努力をすれば,情勢判断や決定を飛び越して

◆観察から行動へ,行動から観察へと機敏に移ること

つまり, "暗黙の誘導制御" ができるようになります。

 

そんな余裕が出てくると,孫子の兵法でいう

◆兵とは詭道なり(戦争たるものは騙しです)

の実践,つまり勝負から降りるフリをして対戦相手を欺きながら実は手牌を構築していって最終的に勝つなどということも可能になってきます。

 

 

PDCAがダメだからOODAに乗り換える・・・ほんと?》

PDCAでは時系列に則った秩序を意識しますが,OODAループはその点において大きく異なっていることがわかってきました。

 

ここまでいろいろ見てきたところで,もうこの期に及んで,両者をアップル・トゥ・アップルなものとして比較すること自体に意味があるかどうかも不確かになってきました。

 

かたや1個2個ときちんと数えられるリンゴなのに,こちらはなにか得体の知れない生き物で,個体なのか集合体なのかさえ分からないといった感じです。

 

新しいおもちゃを買ってもらうために,前のを破壊するようなことは大人がすべき建設的なやりかたとは言えません。

 

そんなに両者を比べたいなら,似た部分をよくよく厳選してからでないと変なことになってしまいます。

でないと「うーん,一長一短ある・・・かな・・・」というような総花的な結論になってしまうこと請け合いです。

 

 

巷ではびこるPDCA趣味者の唱えるサイクルからは,初期段階ではアタッチされていたはずのデミング博士の経営理念が欠落してしまっているように,OODAループにも明示されていない前提や背景が存在するのに,図のインパクトによってかき消されがちだということを,わかっておく必要があると強く感じます。

 

同じくらい危ういことのような気がします。

  

 

《ようやく・・・です》

ようやく次回以降でその部分をご紹介できそうです。

これまでもイヨイヨ詐欺的でしたが・・・。

 

次回以降のアウトラインを極めて簡単に言うと,やはり,

OODAループを利用して変化する相手に対処する組織に属する人の気持ち

がカギになりそうだ

・・・ということをお知らせしつつ。