ジタバタのかなた

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《言う者は知らず知る者は言わず》 じゃぁOODAループなら使えるのか? その9

今回も 

”Theme for vitality and growth(活力と成長のためのテーマ)”の続き

です。

 

前回はボイド大佐がタイプライターで打った

Patterns of Conflict

を見に行って分かったこともありました。

 

細かい配置や記号など,原典を見てみないとわからないこともあります。

オリジナルを見てみるのは大切ですね。

 

さて,前回と今回の題材である

◆Theme for vitality and growth(活力と成長のためのテーマ)

は,ボイド大佐の  ”Patterns of Conflict” のなかの ”統合” の章を締めくくる大切な部分ですので,今回はさらにもう少し深めに潜ってその真意を探ってみたいと思いました。

 

 

《まずは少し振り返ります》 

ここで書かれていることをより良く理解するために,一度これまでの探検結果を振り返ってみたいと思います。

 

まず,ボイド大佐が国家目標として提示していたのは,”その6” でお伝えしたように

◆変化し続ける環境に応じて形作り対処する有機的統一体の一員としての我々の適応度を向上させること

でした。

 

前回と今回の ”Theme for vitality and growth(活力と成長のためのテーマ)” において ”目的” として書かれているのも,

有機的統一体としての適応度を向上させて,世界中の出来事の推移の隅々において影響力または有形力を形成し拡大すること

です。

 

有機的統一体” という言葉が共通して登場するのは,

■単になんの関連もない個人が集まった全体というようなものではなく,ビジョンを共有して同じ目標を持った個人が有機的に連携して機能する共同体

というようなことを強調する意図があるのだろうと思います。

 

 

さらに,”その7” で探検した ”Further elaboration(さらなる詳細)” の後段にあった

 

「統一的な概念は,集団体または有機的統一体が物事の体系のなかでその才能を高めることを可能にする素質を発展させる触媒または誘導灯として機能できる十分に説得力あるものでなければならない」

 

「別の言い方をすれば,私たちは指揮者や権威者が,彼らの配下構成員に立ちはだかるすべての障害に精力的に立ち向かい征服するための行動を起こさせることを可能にする,方向性を超越したものまたは重心となるものの必要性を提案しているのである」

 

という内容からは,組織内に存在する指揮者・権威者と配下・構成員という二極を区別しながらも,そのような組織でありがちな精神論による統率や上意下達による意思共有への依存というようなものではなく,

 

◆実際に敵と対峙して問題を解決していく配下構成員にやる気や熱意を抱かせるには,もっと具体的で説得力があり,誘導灯的な機能をも有する統一的な概念(ビジョン)が必要なのだ

 

ということを理解することできました。

 

 

いずれも観念的な言い回しが随所にある短い文章なので,解釈も一通りではないでしょう。

 

でも,戦時において指揮者が配下構成員に対して,逐一 ”あれやれ!それやるな!的” な指図ばかりで組織運営が成り立つハズはありません。

ですから,組織末端構成員といえどもあらかじめ提示されたビジョンに基づいて自分で考えて問題解決をしていかなければ,戦わずして勝つなんて夢のまた夢だとボイド大佐は言っているんじゃないかなと思うのです。

 

 

 

 《ジョイントさせます》

ここまで数回の探検調査結果を踏まえたうえで,

 

◆Theme for vitality and growth(活力と成長のためのテーマ)

 

の本質部分を理解する努力をしてみます。

 

 

ここからは,さらに僕の勝手な理解が暴走しますので,間違っている可能性はおおいにあります。

わかりにくいところを自分なりに補完していますので,相応のノイズが含まれていることをご容赦くださる寛容さを切に期待しておりまする。

 

 

さてまず,ここでは第一に,

 

◆ゴールとして何が求められているのかを組織の全員がしっかり理解する

 

ことが統一的な観念として求められています。

 

 

手段や手法を勝手にゴールに置き換えてしまうようなことは,実社会では横行しがちです。

各級の指揮者が自分の利益のために勝手にゴールを作るのでホント始末に負えません。

 

組織全体を考えない浅はかな指揮者が,好き勝手なゴールを作り始めると,本当の目標を達成するプロセスでのズルも随所で横行しはじめます。

 

組織の全員に共通するビジョンを明確にすることによってこそ,そんな ”目標の転移” と呼ばれるような本末転倒の不合理も排除されやすくなるでしょう。

 

職能的自尊心(自分の腕に惚れる職人気質的な誇り)と職務的自尊心(自分に与えられた任務を全うすることへの誇り)の差というようなことだと考えます。

 

 

次に,統一的なビジョンを明確にすることの土台になるものとして,

 

◆ 表面的な理解で満足せず本質を見極めようとする力

◆ 内発的に動機づけられ自律的に問題解決しようとする意欲

◆ 前例踏襲に甘んじることなく,躊躇なく変化に対応できる柔軟な適応性

◆ 一面的な思い込みを排し想像力を働かせて,見えにくい深部や裏面などで進行していることを暴き出す力

 

というような能力を個人や組織が向上させていくことを組織風土として醸成していくことが期待されています。

 

 

統一的なビジョンとそれを実現するための土壌を組織に取り込むことによって,最終的な目標である

 

有機的統一体としての適応度を向上させて,世界中の出来事の推移の隅々において影響力または有形力を形成し拡大すること

 

を実現しようという構図が提示されます。

 

そのような大きな大きな枠組みを説明するための6項目の戦略階層が,これまで何度か貼ってきたこれです。

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その階層のなかの,実務的な手法に近い大戦術や戦術という部分に ”OODAループ” に関することが書かれているというわけですね。

 

 

これでようやくお話しがつながりました。

 

なんと深遠なことでしょうか。

 

 

ようやくその階層の内容を探検に行く準備が整ったような気がいたします。

次回以降で,すでに見た ”国家戦略” の下に書かれている5つの項目の内容を調べていきたいと思います。