ジタバタのかなた

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《言う者は知らず知る者は言わず》 じゃぁOODAループなら使えるのか? その10

前回 ”その9” ののち長らくご無沙汰をいたしておりました。

年度の変わり目はなかなか思うように時間がとれません。

さて,もう相当な忘却の彼方にあったOODAループについてです。

 

ここまでのところ何回かに亘って,

Patterns of Conflict

を探検してまいりました。

 

そのなかで,ボイド大佐の戦略階層的な記述を発見して勝手にヒエラルキー構造の図にしてみたりしました。

 

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Patterns of Conflictの141ページ(PDFの表示では142/197です)の ”Pattern” という表題のページ

を概略図にしたものです。

 

このうちの一番上の ”National Goal / 国家目標” に書かれているところは読み解く努力をしましたが,その下の部分をまだしっかり噛み砕いていませんでした。

 

今回はそのあたりを・・・。

 

 

大戦略 : Grand Strategy》

• Grand strategy
Shape pursuit of national goal so that we not only amplify our spirit and strength (while undermining and isolating our adversaries) but also
influence the uncommitted or potential adversaries so that they are drawn toward our philosophy and are empathetic toward our success.

 

大戦略

国家目標の追求を形作り,(敵を弱体化させ孤立させながら)われわれの精神力や戦力を増幅するだけでなく,中立的なもの,または,仮想敵にも影響を与え,彼らがわれわれの哲学に引寄せられ,われわれの成功に共感できるようにする。

 

国家目標をサポートしながら,現下の敵ではない ”中立的勢力” や ”仮想敵” を味方に引き入れることを大戦略としています。

 

逆説的ではありますが,孫子のなかでも,

◆「交を伐(う)つ」 / 敵の同盟関係を断つ

ことが,敵の策謀をつぶすことの次に重要なことであると言い,戦わずして勝つためには敵と手を組んでいる者との関係を断つことなんだと説きます。

 

 

自国の同盟関係が強固で広範に亘ることは,敵国にとって明らかな脅威です。

勝つためには敵を知らねばなりませんが,他の同盟国のことも知らなければならなくなる・・・という程度の単純なことではありません。

 

同盟国の組み合わせによっては関係性に濃淡も生じますので,組んだ離れたというようなデジタルなものでもありません。

 

そうすると分析すべき事項は極めて複雑多岐に亘ることになりますので,膨大な量の情報を処理して推論を立てなければならなくなります。

 

敵の視点に立てば,われわれの同盟国が増えるということは,考慮すべき事情や対策もガッツリ増えるということになります。

 

それはまさしく敵が,次項の ”戦略目標” でいうところの ”展開していく事象/取組みに対処する” ことができなくなる状況を創り出します。 

 

 

 

 《戦略目標 : Strategic aim》

• Strategic aim
Diminish adversary’s capacity while improving our capacity to adapt as an organic whole so that our adversary cannot cope—while we can cope—with events/efforts as they unfold.

 

• 戦略目標

我々の敵が,展開していく事象/取組みに対処することができないように,有機的統一体として適応能力を向上させながら敵の能力を弱める。

 

 ご覧のように,戦略目標は国家目標をサポートする内容でありながらも, ”その6” でご紹介したとおり,

「国家目標と大戦略は本質的に建設的な傾向がある。他方,戦略目標,戦略,大戦術,戦術は破壊的性質であり,より短期間で行われる」

とあるように,国家目標や大戦略とは少し性質が異なっているようです。

 

 

《同盟国を大事にした人》

辞してしまわれましたが,マティス元国防長官は海兵隊出身ですので,ボイド大佐の ”Patterns of Conflict” のこの部分を読まなかったはずはないと思います。

信念を持って同盟国を重視する施策を取り続けたことも頷けます。

 

この点を理解している方が米国の政策立案の中枢に現在もいらっしゃることを期待したいところです。

我が国にも大いに関係することですし・・・。

 

マティス元国防長官はマルクス・アウレリウスの「自省録」を携行し愛読していたとネット情報で知りました。僕も昼休みにたまたまチラッと見ていたテレビ番組でその本のことを知り,とても興味が湧いています。

近々本屋さんへ行ってみようと思っています。

 

久しぶりのエントリーはこれくらいで。

まだ全力投球には至りませんが,楽しみながら続けていきたいと思っておりまする。

^_^