ジタバタのかなた

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《言う者は知らず知る者は言わず》 PDCAを回せだとぉ? その2

今回はPDCAサイクルのおさらいをしながら,生い立ちなどにも目を向けてみます。

途中でスキを見つけていろいろディスります。

 

 

《核心部分のダイジェストを先に》

PDCAサイクルは,米国の経済学者ウィリアム・エドワーズ・デミング博士(1900~1993)が提唱した品質管理に関する枠組みを源流にしているというような言説もありますが・・・

 

実は,デミング博士がご自身の経営哲学を ”デミングの14ポイント” などに書き遺している内容は,現今のPDCAサイクルの解説本に記載されているようなこととは大きく異なります。

 

ですから,デミング博士の思想とPDCAサイクルは別物と考えるべきです。

 

さらに言えば,デミング博士はPDCAサイクルが不正確なものであると指摘したうえで,新たにPDSAサイクルを提唱しています。

CがSに,つまり,”CHECK” の部分が ”STUDY” になっています。

 

デミング博士はPDCAの "C : CHECK" のフェーズで成功と失敗の二元だけを基準として次なる計画の修正に使おうとすることを批判し,その部分を ”S : STUDY” に置き換えて,

■どこが基準に合わなかったのか

■そこからの気づきは何か

などを検討して根本から見直すことを意図します。

 

加えて,ご自身の提唱するこのPDSAサイクルを,

◆製品または製造工程の学習と改善のためのもの

と説明していますので,それ以外の分野での問題解決のための枠組みとは一線を画していると考えるのが妥当でしょう。

 

 

PDCAサイクルの発明者日本人説》

PDCA・・・ご存知のとおり,

計画(Plan),実行(Do),評価(Check),改善(Action)

のそれぞれ頭文字を並べたものです。

 

冒頭部分でご紹介したように,このサイクルの源流には統計的手法による品質管理の考えがあると言われています。

それは,デミング博士が招聘されて来日し品質管理について日本の企業人に講義した経緯があり,それに触発された日本人がPDCAサイクルを考え出したことに起因するようです。

最後のACTIONだけ名詞ですしね。ネイティヴには違和感があるんじゃないでしょうか。

 

そんなPDCAサイクルなのに,品質管理の枠を飛び出して,僕が所属する組織のように業績評価や問題解決のための万能特効薬のような使われ方をしていることはご存知のとおりです。

 

 

PDCA推進派のここが腹立たしい》 

ここまでのところで,なんにでも反対するアレなヤツだなおまえは・・・というような誤解が生じないように,ここで僕が批判するところをもう一度明らかにしておきます。

 

僕はPDCAサイクルがこれまで,製品の品質管理や製造工程における問題解決に使われ一定の成果を上げていることについて全く異論はありません。

デミング博士の品質管理に対する真剣さや働く人たちの意欲を大切にする姿勢には強く惹かれますし,デミング博士に触発された日本人によってPDCAサイクルが発案されたことに対しても敬意を持っています。

 

そんなところではなくて,

PDCAサイクルを日々変化する対象と格闘する現場に強引にあてはめようとする

■指を折って数えることのできない仕事なのにうわべの数値目標の提出を強制する

■そのことによって仕事への誇りを失い疲弊して倒れていく実働要員を成果主義にもとづいてさらに鞭打つ

というようなことをしておいて何の呵責も感じないPDCA扇動者に対して大きな違和感を感じているのです。

 

彼らは間違いなくPDCAについてよく知りもしないで旗を振っています。

少なくともデミング博士の経営管理に関する理念を少しでも学習して理解したならば,そんなふらちな悪行ザンマイにはならない筈です。

わかってやっているとしたら暴君の所業です。

 

本来のPDCAのPのところでは,標準となるものが決められ,それに基づいて作業した結果を評価検証して改善するという流れを期待しています。

標準となるものが臨機にグルングルン変化するなどというようなことは,もともと考えられていない枠組みなのです。

このところ朝工場に出勤するたびに製造ラインが勝手に前と違うものになってるんだ,もうこれで7日連続だよ・・・というようなことが起きないからPDCAサイクルは旋回させられるのです。

 

 

《実際にジタバタさせられたので》 

前回申しましたように,僕の所属する組織でも「PDCAをきちんと回せ」なんていうフレーズが年度代わりをまたいで飛び交います。

なにをどの程度回したら ”きちんと” なのかも明示されないから現場は右往左往します。

現場は,もうなに言っても無駄だよね,とあきらめムードです。

号令をかける側も ”きちんと” の加減を分かっているわけではないので,成り行き任せです。

まさしく 「言うものは知らず」 です。

 

本屋さんにもPDCAに関する指南書は多数売られています。

「そんなことはPDCAがうまく回ってないから起きるんだろう!ちゃんと回せよ!」

てなことを言われて,自分の受け持ち部署で ”PDCAが回らない理由” を探すために藁をもすがる気持ちで本屋に行った僕のような,切ない需要も何割かは含まれるのでしょう。

 

 

 

《つじつま合わせの奇妙な現象も起きます》

先ほども書いたように,PDCAサイクルで計画や行動を評価するためには ”数値目標” が不可欠だとあらゆる場面で叫ばれます。

それを強制される側ももう慣れっこになっているので,当たりさわりのない実行容易な数値をサクッと書いて申告します。

数値化に馴染まない仕事も世の中にはゴロゴロありますが,仕方ないのでシレッとそんな数字をひねり出します。

 

そんな表面的な数値ばかりが書かれたペーパーは当然にPDCAの旗振りをするサイドにも供覧されますから,

こんな陳腐な数字を提示してくるとはケシカラン,やる気あんのか,課長を呼べぇ

となるはずなのですが,大概の場合そうはなりませんでした。

 

なぜならば,旗振りサイドは,

①自分の指示どおりにきれいに各部署の目標数値が整然と並ぶペーパーにご満悦

②「みなさんの頑張りによって今期の目標は達成されました。ご労苦に感謝します。来年度もよろしく」とスピーチする自分が見えている

のいずれかだからでしょう。きっと。

  

そうなってくると,もう,PDCAによる業績評価なんて単なる "儀式" です。

 

 

一番大事なデミング博士の経営理念に関することにたどり着く前に,あっと言う間に2600字を超えてしまっていました。

おつきあいありがとうございました。

次回は必ず。