《愚見数則》7 知らないと大損する夏目漱石の処世訓
愚見数則の第7回です。
原文
教師に
勝手に現代文
教師に叱られたといって、おのれの値打ちが下がったと思うことはない。また,ほめられたといって値打ちが上がったと得意になるな。鶴は飛んでも寝ても鶴だ。豚はほえてもうなっても豚だ。人の悪口や褒め言葉で変化するものは相場である。値打ちではない。相場の高下を目的として世渡りする者を才子という。値打ちを標準として事を行う者を君子という。それゆえに,才子には高位高官になる者が多く,君子はひどく落ちぶれても気にしない。
前回お伝えしたように,僕はこの一節に本当に助けられました。
ここでもまずは
「他人の評価なんて単なる相場だから気にするな,人の本当の値打ちとは違うよ」
と言い,次の段階では
「自分の値打ちを信じることにするなら,他人から見て落ちぶれてたって平気じゃないの」
と諭してくれます。
行動する理由の基準をどこに置くかによって,日常の心持ちが楽になるかどうかは大きく変わるんだ,ということがテンポ良く響いて来る一節でした。
”生まれぬ先” ”死んだあと” ”相場” ”値打ち” ・・・この4つのワードは僕が他者と自分の関係を考えるうえでのいろんな厄介なことを,とても楽にしてくれるアイテムになりました。