《愚見数則》12 知らないと大損する夏目漱石の処世訓
愚見数則の第12回です。
原文
勝手に現代文
何事かを成し遂げようとするならば,時と場合と相手と,この三者を見極める必要がある。そのうち一つが欠けても無論のこと,その百分の一が欠けても成功はおぼつかない。ただし,何かをするにあたって,必ず成功を目的として計画すべきものと思ってはいけない。成功を目的として何事かを成し遂げようとするのは,月給を取るために学問するのと同じことだ。
前段は,何をするにもやみくもに突進するのではなく,情報を握って見極めてからということかと思います。
情報が大事だということに関しては,孫子の「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」 という一節も有名です。
このところマイブーム(⬅︎みうらじゅんさんの発明した言葉だそうです)になっている “孫子” については解説本なども買ってきて読んでおりますところ,「真説孫子」(デレク・ユアン著 中央公論社刊)に,
『「状況・帰結アプローチ」は、中国の「効能」についての概念であり、これによって効果をどのように発揮すればいいのかを教えているという。つまり、目標は狙うものではなく、その帰結として関与すべきであるということだ。』(p105)
とありました。
この引用の前の文では,一般に西洋人が「手段と目的」の関係を強調しがちであると記されており,それと対比した流れです。
「若い人たちに成果主義的な考えを押し付けるばかりでは,やる気も失せてしまって,本質的な目標である社会に役立つ者になることができない」
と言いたかったのではないかと思いました。
このあとにも愚見数則では陰陽的な言葉の対比がたくさん出てまいります。
孫子の思想が影響しているのかもなぁと勝手にフムフムしております。